新学期ってなんでこんなにも憂鬱なのだろう。
みんな今までと同じように制服を着こなして、同じように挨拶をかわす。
なにげなく通り過ぎて行く今日という1日を、私達は当たり前のように過ごす。

私、上原かりん(16)はそんなことを考えながら屋上に向かっていた。

屋上はかりんにとってたったひとつの居場所のようなもので、屋上だけがあたしの気持ちをわかってくれるきがしていた。

いつもの場所を目指す。
階段を登って右の曲がった角。
そこからはあたしの住んでいる町全てが見おろせるのだ。
あたしはいつも、何か嫌なことがあれば、ここに来て気持ちを落ち着かせているのだ。

(あれ....?)
いつもの特等席に誰かいるのだ。
見たことのない顔、180あるかないかのスラッとした体型の男性だ。

その男性はあたしの存在に気づくと、
少し焦りながらその場を去っていった。