人はどうして
好奇心だけで走って
行けるのだろう
今の私に未来は見えない
見えないけれども
とにかくもう
こんな日常から
逃げ出したかったんだ。
新しく
生まれ変わりたかった
いつも他人にヘラヘラ
している自分も
ダサい服装でバイトに
行く日々も
サヨナラ
ゴミ箱に長年愛用してた
デニムを投げ入れた。
ミディアムの黒髪を
ライトブラウンの
ロングヘアーのパーマに
イメチェン。
カラーコンタクトをつける
優しいブラウンのまつげ。
細いヒールに花柄の
スカート
シフォントップス
お花のイヤリング
小鳥のさえずりも
聞こえてる。
気持ちのいい朝だ。
スカートやバックが
山積みになった部屋で
鏡を見た。
「自分じゃないみたい…」
久しぶりに変身した
『女の子』の姿。
今は何より自分自身に
驚いて
何で今までやって
こなかったんだろうって
後悔をした。
「行って来ます♪」
お母さんにそう告げると
長い髪の毛をふわりと
させてリズミカルに
階段を降りた。
手で少し髪の毛を触る。
ふ… ふわふわだ~!
今日の私は凄く機嫌が
いいみたいです。
いつもならば
嫌いだったこの暑い坂道。
それがこんなに軽い
足取りで歩ける日が
くるなんて。
今日私が向かう場所は
他県にあるビル。
他県って言っても
電車で30分だけどね。
そう そのビルが
モデル事務所。
私はこれから面接に行く。
上機嫌で鼻歌を歌って
子どもみたいにカバンを
ブラブラしている私を、
コツン と後ろから
誰かが頭を叩いた。
