片倉課長は左手に鞄と女子社員にもらったチョコの入った紙袋を持ち、私からのチョコの箱だけ右手に持って歩いている。
その姿が不自然に見えた。
「あの、どうしてそれだけ手に持ってるんですか?邪魔になりませんか?その紙袋に入れたらいいと思うんですけど」
「邪魔な訳ないだろ。蓮見からもらったチョコは特別だからな。その他大勢のチョコとは一緒に出来ない」
キッパリ言い放つ。
特別と言われ嬉しいやら恥ずかしいやら顔がにやけてしまう。
「そうだ。このチョコせっかく受け取ったんだが、あとでもう一度渡してもらってもいいか?」
「はい」
差し出された箱をバッグの中にしまう。
でも、ちょうどよかった。
不本意な形でチョコが片倉課長の手に渡ったので、今度は直接渡せれる、なんて思っていたら不意に私の手を握ってきた。
「右手が寂しくなったから」
ちょっと待って!
そんな可愛いことを言うキャラだっけ?
普段とのギャップに戸惑いを隠せない。
ドキドキしながら視線を上げると、柔らかく笑う片倉課長と目が合った。
「こうして蓮見と並んで歩きたかった」
繋いでいた手を片倉課長は口許へともっていき、私の手の甲に口付ける。
寒空の下、私の体温が再び上昇する。
さっきから片倉課長の甘い言動の連続に、私の心臓がいくつあっても足りない。



