紳士な課長、愛をささやく


「今考えると、その時の俺は蓮見にこっちを向いてもらいたくて必死だったんだろう。もう形振り構っていられない。黙って指をくわえているだけじゃ欲しいものは手に入らないからな」

真っ直ぐに射抜くような視線で私を見て、胸がドクンと跳ねる。

「今日、蓮見が残業していたのは俺にとって好都合だった。様子を見ながら声をかけようとしていたら、俺が電話している隙に帰ってしまったのには焦ったが」

片倉課長は苦笑いしながら言葉を続けた。

「後を追ってフロアを出たところで蓮見が包装された箱を持っているのが見えた瞬間、イラッとした。帰ろうとしたってことは、それを渡す相手は俺じゃない。そう思ったら大人げなく誰に渡すのか追求してしまった」

バツが悪そうに自身の行動を振り返る。

それって片倉課長がヤキモチを焼いてくれたってこと、だよね。
私の心臓はこれ以上ないってぐらいドキドキしっぱなしだ。

「蓮見からのチョコを諦めていたから、これが俺宛だとは思わなくて驚いたと同時に嬉しかった」

鞄の上に置いていた箱を持ち上げ、嬉しそうに笑う。
その顔を見て心が温かくなる。

片倉課長にチョコはもう渡せないと思っていたけど、無事に受け取ってもらえてよかった。

「じゃあ、行こうか」

片倉課長に促されて会社を出ると冬の冷たい空気に包まれ、身体が震えた。