「蓮見さん、悪いんだけどこの段ボールの中に入っているファイルを片付けてくれない?」

「はい、分かりました」

始業開始一時間後、先輩の園川真知さんが床に置いている段ボールを指差す。
その中には園川さんが仕事で使ったであろうファイルが大量に入っていた。
園川さんが使ったんだから自分で片付けて欲しい。とは言えない、小心者な私。

三年目とはいえ、まだまだ下っ端だから雑用はバリバリやりますけどね。
段ボールを持ち上げると、予想外の重さにげんなりしながら資料室に向かった。

資料室の定番といえば、埃っぽいし薄暗いといったマイナスなことが多いと思う。
うちの会社の資料室はそんなことはなく、オフホワイトの壁に囲まれているからか照明をつけると明るい雰囲気になる。
それに、総務の人が定期的に掃除をしてくれているから綺麗なんだ。

資料室にある簡易テーブルに段ボールの中に入っていたファイルを数冊取り出すと、見事に年度がバラバラだった。

園川さんは仕事はできるけど、片付けとかそっち方面は苦手みたいだ。
彼女の机の上はいつも大量の書類が積まれていて、よく雪崩を起こしているのを目撃している。

取りあえず、年度順にファイルを並べてから棚に直そう。
作業していたら、ガチャという音と共に資料室のドアが開き、そちらに視線を向けると片倉課長の姿があった。