耳元で囁かれ鼓動が加速する。
ダイレクトに片倉課長の温もりや香りを感じて体温が一気に上昇する。
初めて抱きしめられ、心臓はバクバクしているのに片倉課長の腕の中は心地よくて。
前から知っているような不思議な感覚に陥り、ずっとこのままでいたいと思ってしまう。
この幸せを噛みしめるように目を閉じていると、片倉課長の声が耳に届いた。
「やっとつかまえた」
「えっ」
「俺はどうにかして蓮見との距離を縮めたかった」
そう言って片倉課長は抱きしめる腕に少し力を込めた。
「二人きりになるチャンスは幾度となくあったが、理由もなく食事に誘って蓮見に警戒されても困るので二の足を踏んでいた」
情けないよな、と自嘲気味に呟いた。
「蓮見と浪川が楽しそうに話しているところを何度も見かけた。その笑顔を俺に向けてくれないだろうかとずっと思っていたんだ」
目を細めながら、私の頬を優しく撫でる。
そんな風に思ってくれていたなんて知らなくて、くすぐったい気分だ。
片倉課長に誘われたら速攻でついていくのに……じゃなくて!
うるさい脳内の会話を一蹴し、耳を傾ける。
「この前、浪川が蓮見に触れている姿を見て無意識にあんな行動をとっていた」
もしかして、社員食堂で一緒にご飯を食べた時の話をしているのかな。
片倉課長からエビ天をもらった時のことを思い出す。



