紳士な課長、愛をささやく


「こら、ちゃんと俺を見て」

そう言うと、下に置いていた自分の鞄の上に手に持っていた箱を置く。
そしてあいた手を私の両頬に添えると正面を向かされ、片倉課長と目が合った。

なにこのデジャブ……。
でも、さっきと明らかに違うのは課長が目を逸らすことなくずっと見つめていることだ。

「もう一度聞く。どうして蓮見は俺にチョコを用意してくれたんだ?」

グッと距離を縮めてきて、もう少しで触れてしまうぐらいの近さに片倉課長の顔があり心臓が早鐘を打つ。
なんかもう意地悪をされているようにしか思えない。
もしかして片倉課長は紳士の皮をかぶった狼なんじゃ……。
恥ずかしくて目を逸らしたいのに片倉課長の手が私の頬を包んでいるので身動きが取れない。

こうなったらやけくそだ。
さすがに片倉課長の目を見たまま言うことはできなくて、キュッと目を閉じて口を開いた。

「……き、だからです」

「ん?よく聞こえない」

「片倉課長が好きだからですっ!」

言ってしまった……。
でも、片倉課長からの反応がなくて不安になる。
それに追い討ちをかけるように私の頬に添えられていた手が離れていく。
さっきまで片倉課長の温もりに包まれていた顔の体温が一気に冷えていく気がした。

やっぱり言わなければよかったと後悔の念に駆られて俯いた瞬間、耳障りのいい低音ボイスが耳に届いた。

「俺も蓮見のことが好きだよ」