紳士な課長、愛をささやく


「これは、片倉課長にです」

勇気を振り絞って言えば、片倉課長はハトが豆鉄砲をくらったような表情になっていた。
そんな顔をしなくてもいいのに……。

手に持っていた行き場のない箱を見つめ唇を噛んだ。
どうせ受け取ってもらえないのは分かっている。
直接言葉で好きと伝えなくても、チョコを渡そうとしてたんだから私のキモチはバレてしまったも同然だ。
こんな形で伝えることになるなんて思ってもいなかったけど。
私は小さく息をはいた。

「でも、片倉課長チョコは苦手なんですよね。だから自分で食べます。それで……申し訳ないんですけど、やっぱりこのあとの食事は遠慮させて頂きます。失礼します」

今の状態で片倉課長と食事なんて出来ない。
言いたいことだけ言うと頭を下げ、その場から逃げるように離れた。
背後でガサッと紙袋が下に落ちる音が聞こえたと思ったら腕を掴まれた。

「待てよ」

引き止めるられ、私が手に持っていたチョコの箱をなぜか片倉課長が取り上げてしまった。
そして、意地悪な笑みを浮かべた。

「これは俺にくれるんだろ」

えっ、片倉課長はこんな顔をする人だっけ?
今まで見たことのない表情に戸惑いを隠せない。
それよりどういうことだろう。
これってチョコを受け取ってもらえたということなのかな。

確かにそのチョコは片倉課長に渡そうと思って用意したんだけど。