「それより、蓮見は誰かに渡すのか?」
「なにをですか?」
「さっき手に持っていただろ」
その言葉にドキッとした。
チョコの箱を見られていたんだ。
『このチョコは片倉課長にです』と言いたいけど言えない。
今、チョコが苦手だと言っていた人に渡せる訳がない。
「あの、それは……」
なんて言ったら正解なのか分からず口ごもる。
「あいつに渡すのか?」
「あいつ?」
誰のことか分からず首を傾げる。
「流通部の浪川。よく食堂とかで一緒にいるだろ」
思いもよらない人物の名前が出てきて目を見開いた。
どうして大和の名前が出てくるのか不思議だったけど、誤解だけはされたくなかった。
「やま、浪川くんにはもう渡しました。義理ですけど。あのチョコは……」
言いかけて止まる。
どうしよう、正直に言うべきか考えていたらエレベーターが一階に着いた。
そのまま乗っている訳にもいかないのでエレベーターを降りる。
「あのチョコは、なんだ?」
エントランスで片倉課長は立ち止まり、さらに追及してきた。
走って逃げてしまおうかなんてバカな考えが浮かんだけど、そんな失礼なことは出来ないし。
『父親に渡すんです』『自分用です』なんて嘘はすぐにばれてしまう。
だったら会社に持ってくるなよって話だし……。
私は覚悟を決めて、バッグからチョコを取り出した。



