振り返ると、さっきまで電話していた片倉課長がこちらに歩いてきていた。
「お疲れさまです」
手に持っていたチョコの箱を慌ててバッグの中に押し込んだ。
「お疲れさま」
片倉課長はコートを着て鞄を持っているから休憩とかではなく、仕事が終わって帰るところなんだろう。
ということは、必然的に同じエレベーターに乗る訳で。
うちの会社は二十時でエレベーターが止まり正面玄関のドアには鍵がかかる。
その時間以降は階段を使い、裏口から出入りしないといけなくなる。
今日はまだ二十時になっていないのでギリギリセーフだ。
「蓮見、このあとの予定は?」
エレベーターを待っていると、突然片倉課長が聞いてきた。
どうしてそんなことを聞くのか不思議に思ったけど、素直に答えた。
「特にないです。晩ご飯の買い物をして帰るだけなので」
「それだったら一緒に晩飯を食べないか?」
「えっ?」
まさかの誘いに言葉を失った。
だって、あの片倉課長にそんなことを言われるなんて予想すらしていなかった。
それに今日はバレンタインデー。
私には予定はなくても課長にはあるんじゃないのかな。
あれこれ考え事をしていたら、片倉課長が不安げな表情を浮かべる。
「どうした?俺とじゃ嫌か?」
「めっ、滅相もございません。むしろ大歓迎です」
パニックになりながら口を開いた。



