紳士な課長、愛をささやく


エンターキーを押し、息を吐く。

出来た。
椅子の背もたれに身体を預け、ゴキッと首を鳴らし伸びをした。

山下さんの分だけでなく自分の仕事もあったので、思った以上に時間がかかってしまった。

修正した会議資料は、さっき部長が営業先から戻ってきた時に提出済み。
間に合ってよかったと胸を撫で下ろした。

山下さんにはしっかり指導をしなきゃ。
彼女は少し注意しただけで落ち込み具合が半端なく、扱い方が難しいのが困りものだ。

壁時計を見ると、十九時半過ぎ。
お腹、空いたなぁ。

今から帰ってご飯作るのは面倒だからコンビニでなにか買って帰ろうかな。
ひとり暮らしだと料理をしても残ることが多くて、いつも冷凍したりすることになる。

パソコンの電源を落とし机の上を片付けバッグを手に立ち上がった。
片倉課長はまだ帰らないのかなと視線を向けると電話中みたいだ。

「お先に失礼します」

邪魔にならない程度の声で挨拶し、営業のフロアをあとにした。

節電の為、照明は十九時には半分落とされる。
静かで薄暗い廊下を歩きながらマフラーを首に巻くとバッグの中に手を突っ込んだ。
取り出したのは、片倉課長に渡そうと思っていたチョコの箱。

それを見て、どうしようか考えていると背後から足音が聞こえた。