紳士な課長、愛をささやく


その他大勢に混ざりたくないとか言いながら、渡すことすら出来ない私が一番のヘタレだ。

そして、初めて片倉課長に直接チョコを渡している場面に遭遇してしまった。
相手はあの桐島さん。
男性ならあんな綺麗な人からチョコをもらえるのは嬉しいことだと思う。
片倉課長は桐島さんのチョコを受け取るのか気になっていたら、予想外の言葉が耳に届いた。

「悪いが甘いものはあまり得意ではないんだ」

「そうだっけ?じゃあ、その袋に入っているチョコはどうするの?」

机の横に置いている紙袋を指差す。

「くれた人には申し訳ないが、食べきれないので弟にやろうかと思ってるんだ」

「そうなのね。じゃあ、これは誰か他の人にあげるわ。お疲れさま」

桐島さんはフロアをあとにした。
このやり取りからして桐島さんは片倉課長を狙っていないということが分かり、ホッとした。
それと同時に、バッグに忍ばせておいたチョコをどうしようかと考える。

片倉課長がまさかの甘いものが苦手ということが発覚した。
明らかにリサーチ不足だ。

一応、ビターを用意したけど、さすがに桐島さんが断られているのを見ているので渡せない。
それに渡したとしても弟さんにチョコをあげると言っていた。
甘いものが苦手なのに大量にチョコをもらっても困るだけだよね。

仕方ない、今年も諦めよう。
ため息をつきパソコンのキーボードに指をのせた。