桐島さんといえば“合コンの女王”と陰で呼ばれていて狙った獲物は逃さない、ハンターみたいな女だと。
この前、原田くんから合コンの話を聞いたばかりだ。
もしかして、次のターゲットは片倉課長とか?
二人のやり取りが気になり、手を動かしながらも耳はダンボのようになっていた。
「記事はもう少しかかるから、出来たら見せに来るわね」
「分かった」
「あっ、そうだ!はいこれ」
手にぶら下げていた紙袋から綺麗にラッピングされた箱を片倉課長に向かって差し出した。
「なんだ?」
「今日はバレンタインでしょ。だからチョコ」
桐島さんの言葉にハッとした。
そう、今日はバレンタインデーだ。
女性社員はもちろん、男性社員も浮き足立っていた。
大和も毎年「義理でいいからチョコをくれ」と言うので昼休みに渡し済みだ。ついでに原田くんにも。
大和は香苗からももらい、無邪気に喜んでた。
本命の子からもらえたのかは分からないけど。
そんなことより、今年も片倉課長の机にはチョコの箱がいくつも置いてあった。
直接手渡せる勇気のない人が片倉課長が席を外している隙に置いているのを目にしていた。
片倉課長が席に戻ると、チョコに気づき無言で紙袋に入れていた。
私はその他大勢のチョコには混ざりたくなくて、渡すなら直接渡したいと思っている。
だけど、朝から渡せるチャンスはあったのにいまだに渡せていない。



