紳士な課長、愛をささやく


***

「蓮見、資料の直しは出来たか?」

営業部のフロアに片倉課長の声が響く。
会議室で打ち合わせを終えた片倉課長が資料を手に戻ってきた。

このフロアが静かになるのは、朝早い時間と終業後一時間が経った頃だ。

私以外にも数人残業していたけど、今はちょうど席を外している。
今日は月の半ばの金曜ということもあり、仕事も忙しい時期ではないので残業する人は少ない。

「もうすぐ出来ます」

会議資料のミスが発覚したのが定時過ぎてから。
これを作成した山下さんは定時に帰ってしまった。

山下さんというのは今年入社した女性社員。
ヤル気はあるけど、そそっかしいのが難点だ。
私は山下さんの指導係で、月曜の会議で使う資料の作成を頼んでいた。

何度もやったことがあるので大丈夫だろうと油断していた。
確認すると、誤字はあるし数字の間違いはあるしで散々だった。
最初、間違った箇所を修正していたけど、探すのが面倒になりすべてやり直すことにした。

「そうか。チェックもせずに出した山下も困ったもんだな。部長に提出する前に気付いてよかった」

「すみません。電話対応していたので確認が後回しになってしまいました」

本来なら資料のチェックが終わるまで山下さんに居てもらいたかったけど、タイミング悪く私の仕事がバタバタしてたので先に帰らせた。
それがいけなかったんだ。