「あの、これは……」
月見うどんの中のエビ天と片倉課長を交互に見る。
「蓮見が食べたそうに俺の天ぷらを見ていたから欲しいのかと思って。それに、まだ箸に口をつけていないから問題ないだろ」
は、恥ずかしすぎる。
美味しそうだなと思って見ていただけなのに。
食べたそうに見えたって、それじゃまるで私が食いしん坊みたいじゃない。
「もしかして、エビは嫌いだったか?」
「嫌いじゃないですよ」
語尾にハートマーク付きで答えたのは私ではなく、目の前に座っている香苗だ。
なに言ってんのよ、と抗議の目を向けると口角をあげて笑った。
「陽菜子、エビ天大好きだもんね!」
「う、うん……」
いや、エビ天は大好きだけども!
まさか、片倉課長がお裾分けみたいなことをするとは思わないじゃない。
「よかったね、陽菜子。ありがたくいただきなさいよ」
ニヤニヤ笑う香苗に私はもう従うしかなかった。
「では、いただきます」
汁につかったエビ天を箸で摘まみ一口かじる。
あー、文句なしに美味しい。
エビはプリプリだし、衣もうどんの汁に浸されいい具合に柔らかくなっている。
香苗は「早く感想を言いなさいよ」と言わんばかりの顔で私を見る。
「エビ天、すごく美味しいです」
「そうか」
片倉課長は一言そう呟くと天ぷらを食べ始める。



