その時だった。近くで物凄い音が鳴った。誰かが物を壊した音だ。



「……急ぐか」



彼はそう言って私から離れると今度は急ぎ足で歩き出した。本当は怖くて仕方ないのに、彼への恐怖のせいか、それともあの教室で待ってる人のせいか。私は進むしかなかった。







中の様子が見れなくなってる教室の前で止まる。ドアの近くには似たような感じの不良が2人いた。





「……さっきの音って、アイツ?」


「あぁ、もう俺らじゃ無理だわ。青生(あおい)、あとは頼む」




顔の傷跡が痛々しい金髪の人がそう言うと私たちに中に入るよう指示してきた。彼は私の方を1回チラッと見るとスグに目をそらしてしまった。




青生と呼ばれた人はそのまま何も躊躇いなく教室のドアに手をかけ、ガラガラとゆっくり開け始めた。




私もその後を追うように入る。中はカーテンで閉め切ってるせいで暗くて、掃除もろくにしてないのかホコリだらけだった。




「………!」




そして入った瞬間に生臭さが漂ってきた。






「青生、おせぇーぞ?何やってたんだ?」


「……お前の指示で春ちゃんを迎えに行ってきただけ」




青生という人はたんたんと辰海くんと話していく。それだけだったら普通だけど、二人の間にはおかしいことがある。




2人ほど血だらけの人が倒れている。
そして辰海くんの手の中にも1人、殴られたのか顔の原型が分からなくなってる人がいる。




それでも2人は何もなかったように話している。





すると目の前にいた青生さんがフイッと私の方に体を向けてきた。その顔はいつも通りの表情だった。




「じゃーね、春ちゃん。俺の役目はこれで終わり」




彼は笑顔でそう言うとそのまま歩き出してドアの外へといなくなってしまった。後に残るのは血だらけの人たちと辰海くんだけ。