太郎は激しく川の流れる音を聞きながら、その父親と同じ事をしようとしている自分について考えていました。

もし今、自分が村に戻ったら、おじいさんやおばあさんががどんなに喜ぶか。

もといた、平和でつつましく、退屈な生活にもどることが、2人にとってどんなに嬉しいことかを考えました。

毎日毎日、少しだけあきらめながら暮らすことで、年老いた二人を幸せにしてやれる、本当の父や母への気持ちなど、そのうち自分も忘れてしまう、そんなかしこい生き方が、自分にはできる気がしました。

自分の気持ちをおさえ、人の幸せを喜ぶことも、また幸せのような気がしました。


「おれは、自分の幸せのために、本当の自分を知りたいだけだ」


太郎はつぶやきました。

太郎は今、わかりたくもない父の気持ちが、少しだけ分かるような気がしていました