太郎は、砂利を踏みしめ、川をさかのぼっていきました。

先ほどの雨で流れが速くなった川をながめながら、本当の父のことを思っていました。

おじいさんとおばあさんは、母のことはよく話してくれました。

たいそう器量が良かったとか、働き者で優しかったとか。

こと細かな会話や仕草まで、太郎に教えてくれました。

ですから、太郎はまるで会ったことがあるかのように、母を身近に感じることができたのでした。