夢で何度も見た場面でした。

女の振り返った顔には、牙も角もありませんでした。

泣きもせず、笑いもせず、ただいぶかしげに太郎を見ているだけでした。

女は太郎をじっと見て、たどたどしい言葉で言いました。

「おや、めずらしい。川下の村の者か。

こんなところでなにをしておる。

はよう帰れ。鬼にさらわれるぞ」