「藤宮…柚、か」




彼女の存在は、俺の中では不思議なもので。


どうしてそう思うのかも、よく分からない。


ただ俺は、彼女に心を許すのが怖かった。




いつの間にか、俺は臆病になったようだ。


自分を守るように、殻に閉じこもって。


俺はまだ、13歳のままなのかもしれない。




「アホらし…」




立ち上がって、海をもう一度眺めたとき。


波打ち際には、白い紙飛行機が流れていて。


俺は、その紙飛行機を拾い上げる。


濡れていたけど、辛うじて文字は読めた。




『な』




………な?


ひらがな一文字、この間は確か「き」だった。


何かのメッセージ?誰が?と疑問に思ったが、


きっと俺には関係のないこと。


暗闇に残された俺は、家に帰ることにした。