「ここ、すごく良いところだよね」
「……ただの田舎じゃん」
「前の住んでいたところより、全然良いよ」
彼女は東京から引っ越してきたと、
航平が言っていたのを思い出した。
東京より確実に不便なのに、変わってる。
「空気が澄んでるし、海も川も森も、何もかもが綺麗だもんっ」
「まぁ、都会に比べたらそうだけど」
「彼方くんは?ここ、すき?」
「……普通、かな」
この田舎は、好きだけど、嫌いだった。
言葉を濁した理由なんて、どうでもいい。
俺の心に生まれた矛盾なんて、
彼女には何も関係ないのだから。
彼女を家の近くまで送った後。
俺は、もう暗くなってしまった海に向かった。
波の音は、いつもと変わらず。
空には、星たちが輝き始めていた。

