駄菓子屋を出て、だらだらと歩いて数分。
聞こえてきたのは、波の音。
「……暇だし、行くか」
田舎に似合わない、小さな海。
潮風が吹いて、涼しく感じる。
俺は日陰になる場所に座り、
しばらく穏やかな海を眺めていた。
鞄からスマホを取り出すと、着信履歴が5件。
相手が誰かなんて見なくても分かる。
めんどくさくなって電源を切ろうとしたら、
着信音が鳴り響いた。
ため息をつきながら、渋々通話を押す。
「……なに?」
『お前、やっと出たか』
ため息混じりに言葉を続けるのは、
岸本 航平〈 キシモト コウヘイ 〉だった。

