「……なに?」 ばあちゃんが一呼吸置いて話すときは、 昔からあまり良い話じゃない。 「たまには、線香の1本でもあげるんだよ?」 ばあちゃんは「母さんに」と言う単語を、 あえて言わなかったんだと思う。 ま、ばあちゃんの気持ちは分かるけど。 それでも俺は、母さんを許すことはできない。 これからも、ずっと…… 「帰ったぞ~」 玄関から、じいちゃんの声が聞こえた。 ばあちゃんが「おかえり」と言っている間に、 俺は逃げるように、自分の部屋に行った。