杏子が美穂の事情聴取を受けている時、健一も佳祐から事情聴取を受けていた。
「『俺がそいつのことを忘れさせてやる』ってか！」
健一は、帰り道、案の定佳祐に根掘り葉掘り聞かれて、全てを話すハメになっていた。
「・・・・・・」
「健一、お前かっこよすぎ！なかなかそんな台詞言われへんで！我慢できなくてキスしたって聞いた時は、どうしようもない奴やなぁって思ったけどさ、やるときはやるんやな！ところでそいつって元カレ？」
マシンガンのように喋り続ける佳祐を横目に、健一はため息をついついた。
「わからん・・・」
「浮気されて別れたとか？それか、突然の事故とか病気で亡くなったとか？」
「・・・突然の事故で亡くなった男を忘れさせる自信ないし」
―――考えたこともなかった。彼氏を病気や事故で亡くしたなんて・・・勝てる気がしない。
「あっ、健一これは例えやし・・・」
佳祐は、俺を励まそうとしてくれたが、耳に入ってこなかった。
「ほんま、自信ない」
「何言ってるねん！そんなどこにいるかわからん奴より目の前の男やって！」
そう言うと、健一の背中を思い切り叩いたので、前につんのめった。
「・・・そっか？」
佳祐の励ましに少し頭を上げて、先を見ようとしたが、杏子の顔を思い出すとやっぱり自信がなくなっていく。
―――今でも泣くほど好きなんやで？そんなん無理やし･･･。でも諦めることもできない･･･。
