―――はぁ・・・。
杏子は真っ青な空を眺めながらため息を一つついた。
「杏子、ごめんね〜」
嬉しそうに手を振りながら近づいてくる美穂が悪魔に見えた。
「いいよ〜。古野先生なんやって?」
「そんなことどうでもいいんよ!それより眞中くんとはどうなってんのよ!?」
杏子は話を逸らそうと思ったのに見事に失敗してしまった。
「あ、うん」
お弁当を開けながら、杏子はしぶしぶ頷いた。
「それで、あのタオルは何?」
「あれは・・・昨日貸したんよ」
「貸した?はい、詳しく聞きましょう。いつ、どこで、どういう状況でそうなったん?」
鋭く聞いてくる美穂に杏子は背筋を伸ばした。
―――美穂、怖いし。
目の前の美穂も怖いが、話さなかった時の方が怖いような気がしたので、話すことを決意した。
「あの・・・昨日の帰りに眞中くんが傘を持ってなくて、濡れてたから、貸してあげたんよ」
「ふぅん」
―――納得してくれた? お願い、納得して!!
しばらく二人は黙ってお弁当を食べていたが、美穂は何かを考えてるようだった。その無言のシンキングタイムが、杏子を緊張させた。
「駅で会ったん?」
「えっ?違うけど・・・」
予想外の質問に少々困惑した。
―――一体、何が聞きたいんやろう・・・。
「じゃあ、どこで会ったん?」
「えっと・・・古着屋さんの前やけど・・・」
杏子は昨日、学校と駅のちょうど中間くらいの古着屋さんの前で健一に追いつかれた。
杏子の答えに再び美穂は考え始めた。
美穂を見ると、頭をフル回転させていろいろな考えを巡らせているようで、時折、首を横に振ったりしている。
「ねぇ、どっちが呼び止めたん?」
「えっ?・・・眞中くん・・・」
美穂が何を考えているかわからないので、ごまかしようもなく正直に答えた。
「なんで?」
―――なんでって・・・キスしたことを謝ろうと呼び止められたなんて・・・言えるわけがないし。
「な、なんで、かな?」
明らかに動揺して目が泳いでいるが自分でもわかった。
そして、美穂がそれを見逃していないのもわかった。
「はい、杏子さん。詳しく聞かせてもらおうか?まずは、眞中くんがなぜ、あなたを呼び止めたのか?」
刑事のように容赦なく降りかかる美穂からの質問に観念して、全てを話すことにした。

