「相変わらず、眞中くんはモテるんやね」
目線は、健一の方を向けて言う沙知は、話しぶりからして興味がなさそうだった。
「そうやね」
杏子は健一の方を見ることもなく、愛想もなく返事をした。
「杏は、眞中くんに興味ないの?」
不意の質問に動揺し、杏子はなんて答えたらいいかわからなかった。
「・・・・興味?ないない!あんな奴!」
―――沙知はどうなんやろう・・・。
沙知と健一なら、美男美女でお似合いやろうなぁ・・・と一瞬思ったが、沙知みたいないい子にあんな最低男は似合わないと否定した。
目をきつく閉じて首を振る杏子を見て、沙知は「どうしたん?」と聞いてきた。
「いや、なんでもない!」
「杏子、おもしろいね〜」
沙知の笑顔に照れて、杏子は肩につきそうなくらいの髪をくるくると指に巻き付けて、照れ隠しをしていた。
「全員、席に着けよ〜」
中西の声で沙知との楽しい時間が終わり、杏子は現実に戻された。
とぼとぼと席に着く。隣には健一。
あの日以来、口もきいていなければ、近くにも寄っていない。
―――この男は一体どう思ってるんやろう・・・。
「じゃあ、球技大会の準備、後片付けの役割分担を決めてあるので、各自、目を通しておけよ」
中西の声に杏子は、手元のプリントに目をやった。
―――1年は後片付けかぁ・・・疲れてるのに面倒やなぁ。
杏子は、プリントを見てうんざりしていた。