杏子は一日中、杉村の猫撫で声が頭から離れずに放課後になった。


「今日は、前田くんと帰るん?」

「うん」


美穂の嬉しそうな顔を見たら、杏子も嬉しくなってきた。

―――早く委員会に行こう。


廊下に出ると、空が薄暗く雨が降り出して来ているのに気付いた。


「雨降ってるし・・・」


小さく呟き、体育委員会が行われる化学実験室へと急いだ。


「きょうこ~」


急に呼ばれたことに驚き振り返ると、沙知の姿があった。


「委員会行くやんな?」


いつものような優しい笑顔を見ると、さっきまでのイライラが帳消しになりそうだった。

癒されるってこういうことなんだろうな、と思いながら返事をした。


「うん。一緒に行こう」


二人が化学実験室についた時、すでにほとんどのメンバーが集まっていた。

健一の周りには、いつものように先輩達が群がっていた。

杏子は自分の席には行けず、沙知のクラスのテーブルに避難していた。