―――誰?この男・・・めっちゃ睨まれてるし。


放課後、健一は華代に言われた通り学校近くのカフェまで来ていた。

健一の前には、華代と悠が座っている。


「ごめんね。眞中く・・・」


「言っておくけど、華代は俺んやから」


悠が華代の言葉を遮り、独占欲を丸出しにした。


―――はぁ?意味不明なんですけど・・・。


「彼は私の彼氏の相澤悠。どうしても着いてくるって言ったから・・・ごめんね」


ちらっと悠の方を睨みながら華代は言った。


「それで、なんでキスしたん?」


―――なんでこんなに単刀直入なんだ。



「杏子ちゃんね、ショック受けてたんよ・・・」


―――やっぱり・・・そりゃそうやんな。


「・・・・・・」


「男の人って好きでもない人にキスできるんかな?って・・・」


―――好きでもない人にってのは間違ってるんやけどな・・・。


健一は弁解したかったが、できなかった。


「・・・・・・」


「杏子ちゃんのお友達のことが好きなんでしょ?」


「いや・・・それは違います」


それまで俯き加減だった健一は顔を上げて、華代の顔を見据えた。


「えっ?違うってどういうこと?」


華代は眉間に皺を寄せ、前に乗り出しながら健一に詰め寄った。


「俺は、あいつ・・・いや彼女のことが好きなんです。でも勘違いしてて・・・」


健一は、『助けて』と言わんばかりに、必死に訴えた。健一の訴えを聞くと、華代は乗り出していた体を元に戻し、頷いて軽く「そう」と言うと席を立とうとした。


「えっ?相談に乗ってくれるんじゃ・・・」


華代の思わぬ行動に、健一はうろたえてしまった。