「じゃあ、ここに入って」
健一連れてきたのは、誰も来ることがない校舎の端にある資料室。
埃だらけでかび臭く、カーテンが閉められていて昼間というのに薄暗い。
健一は、こんなところに連れてこられて、警戒していた。
「大丈夫よ、襲ったりしないから」
健一と向かい合い、彼女は腕を組んで健一の表情を見ながら言った。
彼女の声色が変わったのに気づいたのか、健一は眉間に皺を寄せた。
―――回りくどい言い方は嫌い。
彼女は単刀直入に聞くと初めから決めていた。
「ねぇ、杏子ちゃんになんでキスしたの?」
「は?」
鳩が豆鉄砲喰らった顔とはこういうのなんだろうな、と彼女は思いながら健一の表情を見ていた。
健一は、彼女の予想外の質問に開いた口が塞がらなかった。
「ごめんね。紹介が遅れたわね。私は桜木華代。杏子ちゃんのいとこ」
「い、いとこ?」
健一は、さらに、目を見開き驚いていた。
突然クラスメートのいとこにこんなところに連れてこられて、あんな質問されてるんだから。
しかし、彼女にとってそんなことはどうでもよかった。
「で、なんでキスしたん?」
健一が動揺してるのが見て取れた。
いい加減な気持ちでななさそう、というのが彼女の印象。
しかし何も話し出す気配がないので、彼女は「とりあえず、なんか理由があるみたいやね。
今日は放課後時間ある?」と聞いた。
「は、はい」
「じゃあ、グレインっていうカフェで待ってるから、来るんやで!」
「はい」
半分脅すように言われたで健一は素直に頷くしかなかった。
彼女は、そう仕向けたのだから、乗ってきてくれないと困るところだった。
―――放課後、じっくり聞いてあげるから、覚悟してなさい!

