「ちょっと、どこに行くんよ!」
杏子は、無理矢理腕を引っ張って行く健一に突っ掛かるように言った。
「あれにしよ!」
「ほんまに行くん?」
健一が指差した先を見て、杏子の顔がみるみるうちに青ざめた。
健一は、自分で差した場所がどこかがわからなかったので振り返って確認すると、指の先には、お化け屋敷。
最近できたばかりのこのお化け屋敷は、廃墟となった病院をイメージしていて、小児科病棟を通ると赤ちゃんの泣き声が聞こえたり、手術室に入ると血まみれの患者が出て来たりと、究極の恐怖を追究していて、途中でリタイアする客も少なくない。
「お前、怖いん?」
杏子の怖がり具合に、健一の心が刺激され、もう少しいじめてやりたいなんて思っていた。
「こ、怖いわけないやん」
明らかに怯えた顔で、強がりを言う杏子を見て、健一はさらに怪しげな笑みを零していた。
「さぁ、行くぞ〜!」
動こうとしない杏子を引っ張り、お化け屋敷へ向かった。
「ねぇ・・・」
「何?」
弱々しく健一の腕を引っ張ったので、振り返って俯く杏子の顔を覗き込んだ。
「あのね・・・やっぱりやめへん?・・・私お化け屋敷苦手やから・・・」
上目遣いで控え目に言う姿は、健一の鼓動を速めるのには充分だった。
「ね?」
―――やばいって!そんな顔して『ね?』なんて言うなよ。
うわぁ・・・めっちゃドキドキしてる。
「あかん!俺も苦手なもの乗ったんやから!」
再び杏子の手を引き、歩き始めた。
抵抗が見られたが、ここは男の力でグッと引っ張った。
「え〜いやや〜!」
杏子の大きな声が聞こえた瞬間、健一は足を止めた。
急に止まったので、杏子は健一の背中にぶつかった。
「大丈夫。俺がいるから」
健一は振り返り、杏子の不安そうな表情を見て呟き、再び歩き出した。
健一の言葉を聞いた瞬間、杏子は健一の手を強く握った。

