「岡崎さん!」


健一が呼ぶと、杏子は我に返った。


「ねぇ、どういうこと?」


杏子は健一に詰め寄り、今の状況を説明させようとした。


その表情は、鬼気迫るものがあり、健一は後ずさりした。


「こっちが聞きたい」


呆れ声で返事をした。



「はぁ?」


杏子は、眉をひそめて、『何言ってんの?あんた知ってるんでしょ』と言わんばかりの表情を健一に向けた。


「なぁ、お前は何て言われて来たんや?」


少し落ち着かそうと思い、健一は杏子に質問をした。


「私は・・・美穂に二人で遊園地に行こうって・・・」


―――そうか、佳祐と江坂さんが企んだことなんやな。


「ふぅん・・・。佳祐に誘われたわけじゃないんや」


佳祐に誘われて来たのではないことがわかり、健一は安心していた。


「えっ?前田くん?・・・・・・なんで前田くんが私を誘うの?」


「・・・惚れてるから?」


健一は、今の状況からしても、おかしいと思いながらも、答えていた。


「はぁ?あの状況から考えて絶対ないやん!」


「だからさ、俺ら騙されたんやん」


「・・・・・・」


―――騙された・・・。


健一は、佳祐と美穂の企みに気づいた。


それを杏子に伝えるわけにもいかず、悩んでいた。


一方、杏子はなにがなんだかわからず、健一を睨んでいた。


健一がどう説明しようか考えを巡らせていると、杏子が顔を上げ口を開いた。


「ねぇ、あんた、美穂のことが好きなん?」


「はぁ?す、好きじゃないし」


健一が想像もしていなかった質問に動揺してしまい、噛みながら答えていた。


健一は、杏子が急に話し始めたから動揺していた。


しかも、杏子が健一を見上げる上目遣い動揺が倍増した。


そして、冷静さを取り戻すため意軽く息を吐いた。


「わかった!今日は楽しもう!それで美穂のことは、忘れよう!」


「はぁ?」


―――何勘違いしてるんや?俺が江坂さんのことが好きやと思ってるんか?


「ねぇ、早く行こう!」


「あ、あぁ」


健一は、誤解を解くこともできずに、杏子に連れられて行った。