しばらくの沈黙の後、美穂は名案が浮かび急に立ち上がり、くるりと回り佳祐の方を向いた。
「いいこと思い付いた!」
佳祐の顔を見ようとしたが、佳祐は美穂から目をそらしていた。
「お前、スカート短すぎ。そんな勢いよく回ったら、パンツ見えるぞ」
「なっ!佳祐のエッチ!」
その言葉に美穂は反射的に鞄を手に取り、佳祐の頭を叩いた。
「痛いって!で、いいことって何やねん!」
美穂は、攻撃の手を緩め再びベンチに腰を下ろした。
「遊園地でダブルデートは?」
「はぁ?それってお前が行きたいだけやろ?」
佳祐は、お前の考えなんてお見通しといった表情をしていた。
「ばれた?」
「でも、まぁ、いいか・・・」
「そうそう、まぁいいやん」
いつだって佳祐は、美穂の案に乗った。
どんなくだらないことを言ったって、バカにしたりしない。
「お前、それ面白い!」なんて笑う。
でも、美穂は恋人だった滝沢には、こんな風に話すことはできなかった。
きっと、これが美穂の本音だったんだろう。
美穂がいろんな考えを巡らせていたら、佳祐が真剣な表情で話し始めた。
「それよりさ、岡崎ちゃんの気持ちはどうなん?健一のことどう思ってるん?」
「私はね、黒谷くんより、眞中くんの方が杏子に合うと思うんよ」
「はぁ?お前、意味わからんし。それは、岡崎ちゃんの気持ちじゃなくて、美穂の意見やん!」
もっともな佳祐の意見に美穂は固まる。
―――そう言えば、私が『かっこいいね』って言った時も反応が薄かったし・・・。追い掛けられて、迷惑そうやったし・・・。嫌い?いや、『嫌よ嫌よも好きのうち』ってやつや!
美穂は、かなり勝手な解釈をして「大丈夫」と言った。
佳祐は少々不安な面もあったが、美穂を信じていた。
「じゃあ、それで決まりやね!」
二人は、作戦会議を終えると公園を出て、駅へ向かう道を歩き始めた。