「杏子、帰ろうか」


「うん」


いつもなら、健一と杏子、佳祐と美穂が二人ずつ並んで歩くのだが、今日、杏子は健一を避けるようにして歩いていた。


―――顔も健一から背けている。


「なぁ、怒っている?」


健一は、杏子が怒っている理由が、本当に嫉妬なのかを確かめたかった。


健一は、笑いを堪えながら聞いた。


「別に」


―――怒ってる、怒ってる。


「やっぱり、怒ってるやん」


「・・・うるさいなぁ。嫌なら周りにいる子たちと帰ればいいやん!私といるより楽しそうやったやん!」


―――どこが?全然楽しくないし。


杏子の反応から、本当に佳祐が言ってたみたいに、嫉妬してるんだとわかった。


「明日からテストやな」


「そうやね」

―――うわっ、そっけないし。


「勉強してる?」


「してるよ」


「あの数学の問題解けた?」


「解けたよ」


―――どんだけ怒ってても、返事はちゃんとしてくれんやな・・・なんか面白いし。


「テスト終わったら、どっか遊びに行かへん?」


「予定あるし」


―――うわっ、普通に断られたし。これちょっとへこむなぁ・・・。

ちょっと赤くなったりして、困るんかと思ったのに・・・。



「夏休みは?」

「バイトする予定やし」


―――そういえば、江坂さんと一緒にショッピングモールのなんとか物産店のバイトをするとか言ってたなぁ・・・。


その後も駅までの道のりを一問一答を繰り返して歩いた。