「岡崎さん・・・酷いことしてごめんなさい」


深々と頭を下げた姿には、しっかりとした反省が見られた。


「あんなことね、許せることじゃないけど・・・まぁ、許してあげようかな。だから頭上げて」


杏子の言葉に頭を上げた杉村の頬には、涙が流れていた。


「ありがとう・・・岡崎さん」


隣にいる猿渡は、杉村の頭を優しく撫でた。


「それにしても、お前らが付き合うとは思わんかったなぁ」


杉村の頭を撫でながら、話題を変えようと、猿渡が切り出した。


「あっ、俺ら付き合ってないですよ」


さらっと言った健一に、猿渡が目を丸くして、健一たちを見た。


「付き合ってないのか?」


「あれは芝居ですよ」


自信満々に答える健一が信じられないといった様子で、再び「ほんまに?」と聞いてきた。


「ほんまですよ。まぁ、俺はこいつのことが好きなんやけど、フラれたんで」


健一が言った瞬間、杏子は「えっ?それ言うの?」と慌てていた。


「・・・フラれてなんでそんな脳天気にいられるんや?」


猿渡の疑問は、ごく普通に考えることだろう。

確かに、フラれてこんなに仲良くしているなんて、普通では考えられない。


「まぁ、こいつ昔の俺が忘れられへんのな?」


嫌味っぽく言う健一に、杏子は不貞腐れ、睨みをきかしてきた。


―――やばい、こんな表情でもかわいく見えてしまう。


「昔のって・・・あの太ってる時?」


「岡崎さんって・・・デブ専?」


猿渡と杉村が驚いた顔で言う言葉に、杏子も我慢できなくなって、とうとう口を開いた。