「・・・俺はフラれたから」


「そもそも、フラれたことになるん?」


佳祐が素朴な疑問を投げかけた。


「う〜ん。まぁ・・・今の俺が嫌いなんやからフラれたんじゃない?」


「嫌いって・・・そこまで言ってないやん!」


弁解したつもりが、墓穴を掘ることになる。


「じゃあ、好きなん?」


怪しげな笑みを浮かべる美穂が杏子に詰め寄る。


―――好きなんかな?でも・・・ガッくんの方が好き。


「ガッくんの方がね」


そう言うと、杏子は、オレンジジュースを飲んだ。


「健一、複雑やな?」


「そうやろ?」


健一は横目で杏子を見ながら言うと、杏子は居心地が悪く小さくなった。


―――私が悪いみたいやん・・・。あんたが昔のガッくんのままやったらよかったんやん!

まぁ、事情があったからしかたないか・・・。



頭の中でいろいろと考える杏子に最もきつい一撃を加えたのは、やはり美穂だった。


「じゃあ、杏子が眞中くんに惚れたら、杏子から告白するん?」


「えっ・・・ちょ、ちょっと・・・」


―――ちょっと待って。私から告白・・・するの?



「それいいな!」


しどろもどろになる杏子を無視して健一も盛り上がっていた。


「岡崎ちゃん、ピーンチ!」


佳祐もまたケラケラと杏子をからかうように、笑っていた。


―――ほんまに?私が告白せなあかんの?できへんって!惚れないようにしたらいいのでは?・・・それは・・・できるのかな?


「じゃあ、俺、楽しみにしてるから!明日から頑張ろう!」


健一は、満面の笑みを杏子に向けた。


―――はぁ?何を楽しみにするんよ!一体、何を頑張るねん!勝手に話を進めるな!!


杏子の心の叫びもむなしく、みんなは杏子がいつ告白するかを予想していた。


「私は・・・1週間!」


「美穂、1週間は早くないか?」


「いいやん」


そう言うと、美穂は杏子の顔を見て、ニッコリと笑った。


―――1週間って・・・無理ですから。


「俺は1ヶ月」


「佳祐、現実的なところいくね〜」


―――みんな勝手に言って・・・。


「眞中くんは?」


「俺はね・・・半年」


「半年?長すぎじゃない?」


美穂が言う言葉に、健一がさらに続けた。


「俺が知ってる杏子ちゃんは、自分から告白できるような子じゃないから、ほんまは『できない』って、予想したかったんやけど・・・俺が我慢できるのが、あと半年やから、『半年』」


―――半年・・・なんか一番リアルな感じがする・・・。


「・・・なっ?それまでに惚れてくれよ?」



顔を覗き込まれて言われた杏子の胸は急に高鳴り出して、収まる気配がなかった。