「杏子、2年の猿渡先輩って知ってる?」
「さわたり?動物の『猿』と『さんずい』に角度の『度』の猿渡先輩?」
杏子は、『猿渡』という苗字にありえないくらい反応をしていた。
―――猿渡先輩が絡んでるん?じゃあ、杉村さんも?
杏子の頭の中には、嫌な考えが浮かんだが、とりあえず話を聞くことにした。
「そ、そう・・・その猿渡先輩がね、昨日のお昼休みにここに来て、『昔は不細工だった眞中健一はいてるか?』って、写真か何かを持って来たんよ・・・私は実際写真は見てないんやけど、見た人によれば、別人やったって・・・」
「その時あいつは?」
「ここにはいなかった」
―――なにそのわざとらしいやり方は、絶対に計画的にやってるし・・・。
健一の方に目をやると、相変わらず佳祐と話をしていた。
―――なんで、こんな噂流されて普通でいられるん?事実やから?
答えの返ってこない質問を健一に投げ付けていた。
―――なんで猿渡先輩が絡んでるんよ・・・。
何のため?もしかして・・・猿渡先輩も杉村さんのことが好きで、諦めさせようとした・・・?
猿渡先輩は、彼女いるんやんな・・・。
ただあいつがモテてるのが許されへんとか?意味わからんし!
3限目の授業中、ずっと不可解な謎の解明に取り組んでいたが、いっこうに解ける気配はなかった。
ぼんやり過ごした授業も終わり、杏子は座ったまま動こうとしなかった。
「杏子!次、体育やで!」
「あっ、私、授業内容聞きに行かないとあかんし!」
廊下を速足で歩き体育教官室までの道を急いだ。

