健一は、屋上に上がると、フェンスにもたれ掛かり、空を仰いだ。


昨日の雨空とは一転し、雲一つない空は、心の奥のモヤモヤとした感情は拭い去ってはくれなかった。


―――ばれたってどうってことないし・・・。見た目が変わったって、あいつに好かれてなんてないんやから。



目を閉じると、あの時の辛い思い出が浮かんで来て、どうしようもなく気分が落ち込んだ。


―――はぁ、そろそろ教室に帰ろう。


昼休みがもうすぐ終わることに気付いた健一は、とぼとぼと屋上の階段を降りた。


廊下には、まだたくさんの生徒が出ていて、その生徒達を避けるようにして教室へ向かっていた。


しかし、教室に近づくにつれて、健一が避けていたはずの人込みは、向こうからっ健一を避けているようにさえ感じられた。


そして、教室へ戻ると、一段と注目され、ひそひそと健一の方を向いて話す姿があった。


すぐに猿渡の顔が浮かび、全てのことを察した。


席に近づくと、心配そうな顔をしている佳祐が健一の顔を伺っていた。



―――お前も、俺のこと避けるんか?まぁ、なんでもいいけどな。



健一は、心にもないことを考えていると、佳祐がいつものように話しかけて来た。


「なぁ、この問題教えて」


「あ、あぁ」


健一の思いとは逆に佳祐は今までと同じように接して来た。


しかし、明らかなのは今まで健一をを囲んでいた女子が一人もいないこと。


猿渡は俺と別れた後、俺の過去を広めて回った。


佳祐と美穂が学食から戻って来た時に、クラス中が口々にしていた噂。


『眞中健一は、昔は今とは考えられないくらい不細工で、女にモテたいから全身を整形した』



この根も葉も無い噂は、周りの人間が、健一から距離を置くのには十分だった。