朝から空は青く澄んで、球技大会日和と言いたいところでだったが、杏子の胸の中は昨夜からもやもやしたものが覆っていた。


―――いったいあのハンカチは誰のものなんよ・・・。


学校内にガッくんがいるのか、誰かにハンカチを渡したのか、それなら黒谷が今どこにいるか知ってるのかもしれないという思いが杏子の中にはあった。


同じ考えばかり頭の中を通り過ぎては答えは出ずに、再び戻ってくる。


眠りに就けば、優しく笑うガッくんが現れた。


その繰り返しで、昨日は眠った気がしなかった。


足を捻挫しているから、少し早い目に家を出て、学校へ向かった。


球技大会の準備は他の体育委員がするから、慌てる必要はない。


ゆっくりと歩きながら杏子が考えるのは、やはりハンカチの持ち主のこと。



いくら考えても答えが出るどころか、ぬかるみに嵌まるかのように、どんどんわけがわからなくなってくる。


そんな時、後ろから掛けられた声に杏子はすぐに反応し、振り返った。


「杏子!大丈夫?」


目の前に立っていたのは、美穂だった。


―――美穂は何かを知っているのだろうか?


「うん、捻挫したんやけど、大丈夫」


笑顔で答えると、美穂は安心した顔をした。


「それにしても、杉村恵許されへん!」


「えっ?」


―――杉村さん?なんで杉村さんの名前が出てくるん?


「杏子、眞中くんから聞いてないん?」


「えっ?あぁ、うん」


―――なんであいつの名前まで出てくるんよ!


「眞中くん、杏子がショックを受けると思って言わなかったんやね」


―――全然、意味がわからん。どういうこと?


「ねぇ、美穂、詳しく教えて」


「あぁ、うん・・・。

杏子さ、杉村さんに階段から突き落とされて・・・ちょうど下にいた眞中くんが受け止めてくれたんよ。

それで、眞中くんがお姫様抱っこして、保健室まで連れて行ってくれたんよ。

私と佳祐もいてたんやけど、遅くなるから帰るように言われて・・・・・・杏子?聞いてる?」


「うん。聞いてるよ・・・」


―――うそ・・・私を助けてくれたのは、黒谷くんじゃなかったん?

しかも杉村さんに突き落とされたって聞いてないし・・・。

えっ?何?意味わからんし!