何度か発信音が鳴り、ようやく出た。
ドキドキ…
「あっ、あの…私…」
そういえば私の名前知らないよね?
なんて名乗ったらいいのかな?
『あ、ナンパ女』
聞こえた甘い声にまたとろけそうに…
じゃない。
「違います。…そ、そんな事より、週刊誌…みました?」
声が震える。
『あー見たよ』
返ってきたのは呑気なそんな声で。
どうしてそんな普通なの?
普通焦らない?
だって大人気俳優の相沢蓮斗でしょ?
「あの…熱愛なんて…嘘だから撤回した方が…いいんじゃ」
と言いかけると
『いーよ、撤回しない』
と言われた。
撤回、しない?
いやいや。
「どっ…どうして。困りますよねっ?」
なんのメリットもないんじゃ…
嘘なのに黙ってるなんて。
『困らねぇけど。あんたも俺の事好きだって言ったろ?』
あの、言いましたけど。
「あれはっ…」
芸能人としてって言おうとしたんだけど。
『17時。駅前な』
そう言って電話を切られた。
はぁぁぁあ?!
駅前に来いってことだよね?
待ってよ…
蓮斗の、考えてる事が全く分からない。
テレビとのギャップがありすぎて付いていけない。

