「ここ座っていい?」

「はい どーぞ。」
ママが言う。

「なににしますか?」

「んービール2つ」

「はい」笑顔で私は答えた

ここはママが切り盛りしている店で
小さなスナック。

私は時々手伝っていた
田舎なこともあり年齢層は高く
若い人を接客したことがない私は
どうしていいのか分からず緊張気味。

「飲めば?」彼は言った。

「あっ いただきます・・」

私はグラスにビールをつぎに行った。

「ママ今日はしずかだね」

彼は奥でお通しを作っているママに話しかける。

「うちはいつも静かだよ」

「いや。いつも混んでて入れないって噂だよ。」

「そりゃ 8人座ればいっぱいの店だからね
たまにそんな日がなきゃやってられないでしょ」

「そっか」彼は笑っていた。

「はい どーぞ」
ママは2人にお通しを出した。

「ママも飲んで」


4人で乾杯した。

そういえば隣の彼見たことあるなぁ・・・・。

「あっ。もしかして
うちの姉の同級生じゃありませんか?」


「そうだよ。昔は近所に住んでいて
よく遊んでいたんだよ。よく覚えていたねー」

「だって私、小さい頃かっこいいなぁって
憧れていたんですよ!
こんなところで会えるなんて
思ってもいなかった。」

田舎なこの町は少し目立ったことをすればすぐ噂になるし
たいていの人は名前を言えば
○○の誰々さんとすぐ通じてしまうのだ。

私はそれが嫌だった。

閉鎖的で筒抜けなこの町。

遊ぶところも少なく夢なんて見いだせない。

この町をずっと出たかった。