風向きは追い風。


背中を押されながら海へと向かう私たち。




アスファルトの上に砂が舞い、ただでさえ悪い視界は更に見辛くなっている。




「この辺でいいかな?」




信明はアスファルトの上に花束を置き、私の手を離して合掌する。


その隣で私も、信明に倣って両手を合わせた。




悲劇から8年。


もうここに葵さんの意識が留まっていないのだとしても、きっと私たちは毎年命日になるとこの海岸を訪れるだろう。


残された者が自己満足で弔う事。


周りからはそう思われているのだとしても、私たちは誠意を込めて葵さんの冥福を祈りたいと思うから。