水面に落ちる音は風の音に掻き消されて聞こえない。


しかし過去にはプロ球団からも目を付けられていたピッチングの腕前は、肩を故障してしまったとは言え未だ健在していた。




「流石だね。

葵もよく自慢していたよ。

私の弟は野球が上手だ・・・って。」




信明は准一を褒め、私の腕にあったコスモスの花束を受け取った。




「優香、懐中電灯を。」




「うん。」




暗い海岸を懐中電灯の光で照らし、少しずつ海岸へと近付いていく。




足を滑らせれば終わり。


私と信明は腕を組みながら、ゆっくりと海を目指し歩いて行った。