日没を待たずに毛無山を下山した私たち。




展望所を訪れた時とは違う沈黙が、私たちの間にまだ残っている。


タバコを口に咥え、来た道を戻り峠を下っていく信明。




私たちはこれから行かなければならない場所があった。


できれば日没前に、その場所に辿り着ければ・・・。




「ヤバイな・・・。

このままじゃ日ぃ暮れちまうよ。」




「大丈夫!

あの辺りにはわずかに民家があるから、陽が落ちても真っ暗になる事はないはずだし・・・。」




目的地に向かおうと言い出したのは私だった。




過去に交わした約束を全うするため。


そうする事で、きっとお互いが柵から完全に解放されると思ったから・・・。