毛無山の展望所からは、私たちの地元である小樽市の街並がパノラマで一望できる。


私の実家がある銭函は遠く、山の影に隠れてここからは見る事ができない。


しかし信明の実家がある桜地区は、大きな目印と共にこの展望所から見下ろす事ができた。




「俺の実家、あの辺なんだ。

ほら、観覧車が見えるだろ?」




海沿いに見える観覧車と大型商業施設。


小樽築港駅に隣接したそれらの手前を指差し、信明は自分の実家の場所を私に示してくれる。


桜町から銭函までは駅2つ分の距離。


その距離を葵さんは、たった1人で歩いて帰ろうとした。