地元・銭函を抜け朝里川温泉から国道393号線に入った私たち。


車の中での会話は少なく、さっきまでの気まずさをまだ引き摺っていた。




ワイン工場の前を通り過ぎ“毛無山(けなしやま)”の峠を上っていく。


陽が傾きオレンジを帯びた光の差す方に見えたのは、毛無山の山頂に程近い展望所の駐車場。




信明は展望所の駐車場に車を停め、先に車から降りて私を先導した。




「優香、展望所に行こう。」




そう私に声を掛け、信明は100メートル程先にある展望所の風景を見つめる。


素直に車から降りた私は、信明に付いて展望所へと向かった。