「ま・・・待って!!」




私は必死に信明を引き止めようとした。




こんな中途半端な状態で離れたくない。


だけど差し伸べた私の手は、いとも簡単に振り払われてしまった。




「信明ぃ・・・っ!!」




振り払われたその手は悲しく腰元に垂れた。


信明は無言のまま、玄関でいそいそと靴を履いている。




「・・・やっぱり、後悔してる・・・?」




もしかしたら彼は、あの夜私を助けた事を後悔しているのではないか。


そんな不安が脳裏を過る。




「違うよ・・・。でも、今日は帰る。

俺から押し掛けておいて悪いけど・・・。

また来週、職場でな?」




信明は振り返り際に一瞬笑みを見せたが、その表情には深い悲しみが滲んだままだった。