元々はおじいちゃん夫婦だけが住んでいたこの家。


しかしおばあちゃんが亡くなりおじいちゃんが1人になってから、准一の家族は元々住んでいた市街地のアパートを引き払いこの家に移り住んだ。


私と准一の実家は同じ小学校の校区内にあるが、小学校が別々だった理由はここにある。




私の実家はここから銭函駅を挟んだ反対側にある。


傾斜のきつい坂が多いこの小樽市。


私の実家もまた、急傾斜な坂道の途中にある脇道を入ってすぐの場所にあった。




「やっぱり今日は賑わってるな。」




多くの人が行き交う駅前の様子を見て、准一は切なげに視線を投げ掛けている。




これから向かう銭函海岸。


その一角にある“銭函海水浴場”。


ここにいる人々は何の柵もなく海水浴を楽しんでいるが、私たちにとってはこの海岸は悲しい思い出を生む場所でしかない。