風薫る恋物語


「おはよ〜。」
また今日が始まる。
昨日と同じ速さで動いていく。
「おい、咲宮。ちょっと職員室に来い。」
朝のHRで突然告げられた言葉。
空にぃは少し悲しそうな顔をしていた。
私は理由が分かるので、小さく頷いた。
周りのみんなはざわざわと話し出す。
昼休みになり、職員室にいる空にぃを訪ねると、校長室に連れていかれた。
「失礼します。」
空にぃに続いて私も一礼して入る。
そこには、校長先生と教頭先生がいた。
「咲宮心愛さんですね?」
「はい。」
私は少し強気に返事をした。
「単刀直入に伺います。あなたは後どれくらい生きられるのですか?」
校長先生の質問に私は少し笑って
「何のことですか?」
と誤魔化した。
「本当のことをおっしゃって下さい。」
当然、そんな誤魔化しが通じるはずもなく私は全てを話した。
「…以上です。」
「そうですか…」
私はどうあがいても卒業式まで生きられない。
なら、今を楽しめばいい。
それだけのことだ。
私と校長先生の話をずっと聞いていた空にぃは今にも泣きそうな顔で私を見ていた。
「なあ、咲宮…」
「わかってるよ。全部言わなくていいよ。」
校長室から出て、空にぃに声をかけたが、何を言いたいのかすぐにわかった。
そのくらい付き合いは長いつもりだ。
「私は来れなくなるまで学校に来るから心配しなくていいよ。」
私は自分に言い聞かせるように話した。
これが、最初で最後の恋になる。
それなら、片思いで終わらせてもいいはずだ。
私はもう充分悩んだ。
この想いは空にぃには伝えない。