「おっはよー!琉華っ」

朝から満面の笑みで私には駆け寄ってくるのは幼稚園から一緒の紗良

紗良はウチの取り引き先でもある松本財閥の娘

小柄で栗色のボブが似合う

誰がどう見ても可愛くてその笑顔はみんなを惹きつける

けどね、よく言うでしょう?

人は見かけによらないって見かけで人を判断しちゃダメだって

紗良は見た感じは明るく清楚で可愛い子

だけど、中身はそんなんじゃない。

気が強くて…いやっ、強いどころじゃないね

紗良の気の強さはハンパじゃない

決めたことは絶対に曲げないし

成し遂げる為にはどんな努力だって惜しまない

好き嫌いがハッキリしててサバサバしてるから可愛いのに男は寄ってこない

本当、もったいない気がする

でも、そんな紗良だから裏も表もないって分かってるから信頼できるのかもね

なーんてそんなこと本人の前では口が裂けても言わない

「おはよう」

「クラス替え楽しみだねっ」

「うん。そうだねー」

桜並木が綺麗な通学路

この桜並木を見るのも2回目か

今年高校2年生になる私達

私達が通う清蘭女学院は超が付くほどのお嬢様校

とても私のキャラじゃついていけないような学校

1年も通えたのは紗良のおかげもあるね

「琉華様おはようございますっ」

「おはよう」

いつの間にか琉華様と呼ばれるようになっていて

挨拶を返してあげると大抵の女の子は頬を赤くする

どうして赤くなるのか私にはさっぱり分からないけど

それにしても今日はいつもに増して騒がしい

みんなそんなに新学期が楽しみなのかな?

それともあれ?クラス替えにきゃっきゃしてる感じ⁇

「ねぇ、なんか今日騒がしくない?」

「そう?まぁ言われてみればそうかもね」

紗良は全然気にならないみたいだけど…

なんか見られてる?

新学期早々、周りからすっごい視線を感じるんですけど?

「なんかすごい見られてるんだけど?」

「琉華、何かやらかしたんじゃなーい?」

おい。軽すぎるだろ松本氏よ

それにやらかしたってなにを?

心当たりがない…

いやっ、ないのが普通でしょ⁉︎

「何にもしてないんだけど…」

疑問の答えは案外早くに分かった

「真田さん、松本さん
おめでとうございます」

突然言われた祝言に振り向くと

爽やかに微笑む確か…生徒会役員の…

「浅田と申します」

そうそう、浅田さん。

こりゃまたなんで浅田さんが?

「どうゆうこと?」

取り敢えず聞くしかないでしょ

「昨年度の終業式終了と同時に今年度の生徒会役員の投票を行ったところ、会長に真田さん。副会長に松本さんが選ばれたのです」

…ん?

なんそれ?投票?いつしたの?

「へぇー、面白そうじゃん?」

んんんっ⁈

なに言っちゃってんの紗良‼︎

全然よくないよ。うん。全く。

「琉華、あんたどうせ暇でしょ?
引き受けたら?生徒会長」

「えっ、あっいや、そのー」

「あたしもやったげるからさ副会長‼︎」

こいつ絶対楽しんでる

間違いなく今の私の状況を楽しんでる

「やります、生徒会長…」

「それでは早速引継ぎを行ないますのでついて来てください」

はぁー

なんでまたこんな面倒なことに…

私がこの何百万と居るお嬢様方をまとめると

そんなの出来るわけないじゃん‼︎

あとで覚えとけよ紗良

憎しみを込めて紗良を睨んだけど

何事も無かったかのようにニコッと笑ってスルーされてしまった

悪魔だ…紗良はきっと天使の皮をかぶった悪魔なんだ

浅田さんについてたどり着いた所は生徒会室

造りは他の教室と同じなのに何か雰囲気が違う

もう本当に神聖な場所って感じじゃん…

重い扉を開くと

「お待ちしてました。
真田さんに松本さん、ようこそ生徒会へ」

私達を迎えてくれたのはもうすでに決まっているのであろう生徒会メンバー

みんな本当のお嬢様みたいで私なんかと違って

気品と自信に満ちた表情

あぁ…本当やってけるのかな…

「全員揃ったので引継ぎを行います」

浅田さんが何か説明してくれてるのは分かってるけどもう言ってる事が難しすぎる…

紗良はテキパキと書類とかに記入していってるのに私はというと

ペンを握りしめたままフリーズ

本当こういうの向いてないんだって

書類にはわけの分からない事がたくさん書いてあって、読むのが面倒だから適当に記入していった

もっとちゃんと読んでおけばよかったって後悔するなんて思いもせず…

「ふぅー、やっと終わったー」

一通り書き終わった

まだ1日は始まったばかりなのにすでにクタクタだ

「生徒会長は学校の顔でもあります。
そのことを理解して今後生活してください」

うっ…ものすごいプレッシャー

「は、はい…」

私より浅田さんの方が断然生徒会長に向いてると思う

「松本さんは生徒会長である真田さんのサポートをお願いします」

「りょーかいっ♪」

なんでそんなに楽しそうなんだ?

「それではこれからよろしくお願いします」

浅田さんの挨拶を合図に生徒会室に居たみんなは去っていった

「私やってける自信ないんだけど」

「大丈夫っしょ?
紗良も居るんだしなんとかなるよー」

本当こいつは…

他人事だと思って呑気なこと言いやがって‼︎

「まぁ、琉華が生徒会長になったってこと誠さんが知ったら喜ぶんじゃない?」

「父さんが?
あり得ないよ、あの人は私に仕事以外のこと求めてないもん」

そう、父は私がちゃんと仕事さえこなせばそれでいいんだから

仕事以外に私が何しようと何の関心もないんだから