部屋には一歩たりとも入ろうとしない彼。 「麻耶(マヤ)」 ひどくドスの効いた声であたしを睨み付けながら呼ぶ。 無意識に左手が震えだす。 左手の震えがバレにいよーにワンピースの裾をギュッと握りしめた。 「麻耶。部屋からは出てないな?」 コクリコクリと首を縦に動かして見せた。 声が…出ない。 数分の沈黙が続き、彼は部屋のドアを閉めた。 するとすぐに一台の車が門を潜り抜けて行くのが見える。 何しに帰ってきたのかわからないけど あたしが部屋から出てないか確認しにきたのは確かだ。